不思議うまれ人間そだち

林 葉月が見た世界、描き記す絵と言葉

NY3日目


目が覚めて目を開けたとき、見たことのない天井が見えると一瞬自分がどこにいるのかわからなくて動揺する感覚がある。

 

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小鳥のさえずりが聞こえる。

隣のベッドの母もちょうど起きたばかりのようで、ベッドでスマホをいじりながら「よく寝れた?」と言うその声ががらんとした広い部屋に響く。

窓から爽やかな光がさしこみ、見ただけでカラッとした空気が伝わるような空の青い色が木の葉の向こう側に見えた。


階下へ降りるとOrestaさんとDennisさんが迎えてくれて、一緒にブランチをとる。

Dennisさんとも改めて少し話す。気さくな感じのいいお茶目な方だ。


家にはテラスがあり、そこへ椅子を並べてみんなで日光浴をする。

 

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とてもいい天気だし、この家の周りはとても自然が美しいから案内するから散歩しよう

ということで、外に出る。

 

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家のすぐそばには小川が流れていて、水がかなり透明で綺麗だ。

Orestaさんは、ここで瞑想したりするの、と言っていた。

母と私もじっと座って、ぼんやり3人で川を眺め、母とOrestaさんは目を合わせては嬉しそうに微笑み合い

若い頃、旅先で会った時の話などをぽつりぽつりとしていた。

少し離れたところからその声を聞き、川をぼんやり眺めたり、川辺の石を触ってみたりした。

 

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マンハッタンから北に2時間来ると、こんなに大自然なのか、と不思議な気持ちになる。

 


しばらくしてOrestaさんが「午後はどうする?もしよかったらCOPAKE LAKEにドライブに行ってみようか、デニスに運転してもらって

この辺はスレートが採れるからそれを材料にして、今は私は彫刻を作っているの。前に、私が住んでいた家の近く」

ということで、午後からドライブに出かけた。

 


Orestaさんと連絡が途絶えていた30年間、どこでどうしてたのかという話をお互いに最初の車中で興奮してダーっと話したけど

また時々、質問したりしてポツポツと話したりした。

母には渡米前に英語を少し復習しといてねと伝えてあったけど、全然忘れちゃってたみたいで

とはいえ私も全然ラフなフィーリング英会話でしかコミュニケーションできず

もう少しボキャブラリーがあったらなあ!とか文法ちゃんとおさらいしてくればよかった!とすごく思ったけど

OrestaさんもDennisさんもいい人で、イライラしたりせず、もどかしい会話でもいつも優しく見守ってくれていた。

 


COPAKE LAKEへの道中に見えるような家にはセカンドハウスが多いと言っていた。

そして家の壁には必ずと言っていいほどアメリカ国旗か星が飾られていて

ボートを所有しているのが庭に見える。

 


Dennisさんもボートが欲しいと言っていたけどOrestaさんが滅多に乗らないのに必要ないとか、無いから乗らないんだよとか

そんなやりとりをしながら、Orestaさんが最近作っている作品の材料がある一角にたどり着いた。

スレートストーンと呼んでいたけど薄くて平らな鉱石が背の高さよりも高く山積みになっていた。

Orestaさんはひとつひとつ形を確かめながら集めていく。

私たちもなんとなく手伝って集め、トランクへどっさりと積み込む。

身近にある材料だけど、この土地の歴史にも繋がっている素材で作品を制作しているの、と言っていた。

薄いスレートで作った作品はこんな感じ

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また車に乗り込んで、今度はOrestaさんが以前住んでいたという小さな赤い家までいってみることになった。

 


Orestaさんとデニスさんの出会いはその赤い家だったらしい。

 


Orestaさんはマンハッタンのアトリエを引き払って、母親の介護を終えて、その赤い家を買って暮らしていたんだけど飼っている犬についていたマダニが移ってしまい、不運なことに都会暮らしだったからマダニの病気についても知らなくて、気づくのが遅れたことでライム病にかかり、生死を彷徨うような状態にまでなったらしい。

アメリカは医療費がべらぼうに高く、全然支払えるような額ではなくて値切ったと言っていたけど、生活に困り、赤い家を売ることにして

そしたら最初に見にきたのがDennisさんだったということだ。

そこから仲良くなって、Dennisさんはその家を買ったけど、売って、今住んでいる家を買ったということだった。

少し離れたところにOrestaさんのアトリエがあって、そのアトリエをとても気に入っているけど

デニスさんが新しく買った広い家の二階にアトリエを移して一緒に暮らせるようにする予定でいるということだった。

そのアトリエ予定の二階に、私たちは泊めてもらっているというわけだった。

 


Orestaさんのかつて住んでいた赤い家は、森の方にあってすごく静かで素敵な感じだった。

深みのある赤い色が素敵でOrestaさんらしいなと思った。

 


そんな話をしながら

お腹も空いてきたし、戻ろうか

ということで戻って、家から一番近い食堂DAD’S COPAKE DINNER に連れて行ってくれた。

いかにもアメリカンな店内。小さい店だけど全部手作りで美味しいのよ、と教えてくれた。

Orestaさんは卵と牛乳がOKなベジタリアンだから、と豆のスープを注文。

Dennisさんは甘いものが好きだから、とパンケーキを注文。

私と母はいかにもアメリカンなものにしよう、とハンバーガーとフライドポテトにした。

Orestaさんが言うように、全く気取るところがなくて美味しかった。

 

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家に着いて、ちょっと疲れたねと言って

各自お昼寝をして、夜はチーズとフルーツをつまみながらワインを飲んで

少しおしゃべりをして、眠った。

 

寝る前に毎晩Orestaさんはハグをして頭を撫でながら「My sweet Hazuki,you are special. So sweet. I love you.Good night」とささやいてくれる。

私は5歳の子どもになった気分でうっとりして抱きしめられ「I love you Oresta.Thank you so much. Good night」と言って甘い気持ちで階段を上がって寝床に入った。

こんなふうに毎日言ってもらえてハグしてもらえていたら、私の人生は全く別物になっていたかもしれないな、と思いながら目を閉じた。